相続対策の王道は「揉めない遺言」
相続対策の王道は、やはり**「遺言」を書くことです。しかも大事なのは、家族が争う原因にならない「揉めない遺言」**であること。
例えば、妻と子供がいる男性の場合、遺言の内容は「妻にすべて相続させる」というのが基本戦略として非常に優れています。
特に、相続税の配偶者の税額控除(1億6,000万円または法定相続分相当額のどちらか多い方まで相続税がかからない制度)の枠に収まる程度の財産であれば、この方法が最もシンプルで効果的です
なぜ「すべて妻に」がいいのか?二次相続対策を超えるメリット
「二次相続(妻が亡くなった時の相続)を考えて、子にも相続させておいた方が良い」と考える税理士の方もおられます。もちろん、遺言を書く方の状況、家族構成や財産によって一概には言えませんが、基本は**「すべて妻に」**を推奨します。
その理由は、遺された妻の柔軟な判断が可能になるからです。
妻が相続した財産の中から、子や孫の必要に応じて生前贈与すればいいのです。
- 子が住宅を取得しようと考えているならば、その頭金部分を贈与してあげる。
- 孫がいるならば、入学金や教育資金を出してあげる。
贈与税の非課税枠や特例を上手に活用すれば、税金がかからずに子や孫へ財産を渡すことができます。結果として、妻の財産が減るため、二次相続時の節税効果も期待できます。
遺されたお金が「ありがとう」とともに子・孫へ渡る
この方法の最も素晴らしい点は、家族の絆を深めることです。
被相続人(夫)が遺したお金が、妻を通じて、子・孫に「ありがとう」の言葉と思いとともに受け取られるのです。
- 頭金を出してもらった子は、その資金を遺してくれた父親と、自分に渡してくれた母親に感謝して理想の家を手に入れるでしょう。
- 入学金を出してもらった孫は、おじいちゃんの思いと、渡してくれるおばあちゃんの優しさに感謝し、勉学に励むでしょう。
そして被相続人の妻は(ここが大事!)
自分が贈与したお金で、子が理想の家で仲良く過ごす姿を見て喜び、孫が希望の学校に通う生き生きとした姿を見て幸せを感じるのです。
だからこそ、**「すべてを妻に相続させる」**という、妻を信じた遺言を書いておいてほしいのです。
争いを防ぐ「付言事項」の力
子にも遺したい場合など、事情がある場合はよく考えて書いていただく必要があります。例えば「先祖代々の土地を長男に」といった特別な事情です。
そのような場合でも、できるだけ妻に多く相続させる内容が良いと思いますが、遺言には**「付言事項」**を必ず書いてください。
付言事項は法的な効力はありませんが、「どうしてこのような内容の遺言を書いたのか」という**あなたの「思い」**を書き記すことができます。この思いを綴ることで、家族の間に争いが起きるのを防ぐ、大きな力になります。
専門家も実践!「すべてこいつに」の愛情
先日、私たち夫婦が親しくしている友人夫妻と食事をしました。
「〇〇さん、遺言書いてる?」と尋ねたら、会計の専門家である彼は「あー、簡単な遺言は書いているよ。すべてこいつにっていう遺言だよ。子どもには、一人500万円の生命保険は受け取れるようにしている。まあ、こいつが亡くなった時は、税金かかるかもしれないけどね」と笑っていました。
「こいつ」という表現は昭和の男だなと思いますが、その表現に隣でニコニコしている奥様への深い愛情を感じました。
遺言は、家族への最後のラブレターです。ぜひ、争いのない遺言を作成してください。

次のブログは、先に妻が亡くなっている場合の遺言について書きますね。
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