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「愛を伝え、愛を遺す相続」のために。後悔しない遺言の書き方

「愛を伝え、愛を遺す相続」のために、遺言を書いておくことは非常に重要です。

以前のブログでは、妻と子どもがいる男性の場合、「妻に全てを相続させる」という遺言がとても効果的だとお伝えしました。(詳しくはこちらをご覧ください)

では、夫に先立たれた妻は、どのような遺言を残せば良いのでしょうか?


1.生前贈与を上手に活用する

お子さまやお孫さまの必要に応じ、生前に、以下の特例などを使いながら、財産を渡していく方法がおすすめです。

  • 住宅取得等資金の贈与の特例
  • 教育資金の一括贈与の特例
  • 結婚・子育て資金の一括贈与の特例

もちろん、ご自身の将来の生活に必要な資金は、必ず手元に残しておいてくださいね。

そして、ご自身の銀行口座から大きな資金を動かす際は、領収書や契約書など、お金の使い道がわかる書類を必ず残しておきましょう。特に、同居しているご家族が預金口座の管理をしているような場合、家族みんながこの点を意識しておくことが重要です。実際に相続が発生した際、ほかの相続人から「この資金は何に使ったの?」と聞かれて困らないようにするためです。

2.「公平」とは何かを考える

「子どもを平等に愛しているから、財産も平等に残したい」という願いは、どのようにすれば叶うのでしょうか。

亡くなった時の財産を、民法で定められた法定相続分通りに平等に分けることが、本当に平等と言えるでしょうか。

たとえば、子どもが3人いるケースで考えてみましょう。

  • 同居していた長男と長男の奥さまに、老後ずいぶん世話になった。
  • 次男には家を新築する際、住宅取得資金の贈与の特例を使って、まとまったお金を渡した。
  • 長女には大学卒業後の留学資金を援助した。

このような事情がある場合、世話になった長男に自宅の土地建物を相続させ、長男の奥さまにも預金を遺贈し、残りの資産を子どもたち3人で等分に分ける、といった配分が、かえって家族全員にとって公平だと感じられるケースもあるでしょう。

次男や長女への生前贈与を考慮して、それぞれに渡す金額を調整したいという思いもあるかもしれません。

3.遺言の「付言事項」で思いを伝える

大切なのは、ご自身の事情を考慮した分け方について、子どもたち3人全員が納得し、感謝して財産を受け取ってくれることです。

そのために役立つのが、遺言書の「付言事項」です。

付言事項には、以下のような、遺言に書いた思いを書き添えてください。

  • 子どもたちへの感謝の気持ち
  • 3人を同じように愛していること
  • 3人仲良く暮らしてほしいという願い
  • なぜ長男に自宅を遺すのか、なぜ長男の奥さまに預金を遺贈するのか、といった理由

付言事項は、公正証書遺言でも、自筆証書遺言でも書き残せます。法律的な意味はありませんが、まさに「愛を伝え、愛を遺す相続の秘訣」です。

4.夫婦で備える「二次相続」

夫が妻の存命中に遺言を書く場合、「妻にすべてを相続させる」という遺言が有効です。

加えて、その遺言に、「もし妻が先に亡くなっていた場合には、子どもたちにどのように相続させたいか」という内容を書いておくのも賢明です。

これを「予備的遺言」などと呼びます。

なぜなら、妻が先に亡くなった後に「もう一度遺言書を書こう」と考えても、その時にはもし、認知症などで遺言能力がないと判断される状況になっていたら、遺言を書くことができません。もし書けたとしても、「認知症が始まっていたのではないか」と疑われ、争いになる可能性があるからです。

5.遺言は「争続」を防ぎ、手続きをスムーズにする

「我が家は兄弟みんな仲良しだから、遺産分割でもめることはない」と思っているご家庭でも、遺言書を書くことをおすすめします。

遺言は、必ずしも内緒にする必要はありません。子どもたちに生前に「このような遺言を考えている」と伝えても良いのです。

遺言書を作成するメリットは多々ありますが、特に以下の点で効果を発揮します。

  1. 手続きの簡素化: 相続人全員が遺言書の内容を承諾すれば、遺産分割協議書を作成する手間が省けます。特に、相続人の中に海外に住んでいる方がいる場合、手続きが格段に楽になります。
  2. スムーズな名義変更: 遺言書の中で「遺言執行者」が選定されていれば、預金の名義書換、不動産の相続登記、株式などの名義書換といった遺産承継の手続きがスムーズに行われます。

6.まずは財産の見直しから

メリットが多い遺言ですが、書くためにはまず、ご自身の財産の見直しから始めなければなりません。

また、兄弟姉妹以外の法定相続人には、法律で認められた最低限の取り分である「遺留分」があります。「遺留分」にも配慮した内容にしなければ、かえって争いを生むことになりかねません。

一人で悩まず、まずは私と一緒に現状の把握から始めませんか?

家族関係に問題が起きそうな場合は弁護士の先生と、多額の相続税が心配される場合は税理士の先生と、私も含めたチームで、あなたの不安を解消し、スムーズに遺言を書いていただけるようサポートいたします。

財産の管理、特に不動産に詳しい1級ファイナンシャルプランナーの私が、まずはお話を丁寧に伺います。